旅に出たいが口癖

路地裏とご飯に食いつきがちな旅好き人間が旅行後の備忘録に書くブログ。不定期更新です。

1/7-③ ボランティアさんの本気を目の当たりにする(吉野ケ里遺跡)

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 吉野ケ里遺跡をてくてく歩き、北内郭に到着。
 先程までは一般の方や王族の住居を見てきたわけですが、ここはクニの祭祀に関することが取り決められた場所と考えられているそうです。建物の感じも、今まで見ていたものとはちょっと様子が違います。
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 3階建ての主祭殿を中心に、ぐるりを囲んだ堀や壁からして、ここが大切に守られるべきエリアなのが分かります。そもそも、王の住まいなどがある南内郭だって物見櫓ぐらいしか高い建物はなかったのに、急に出てくる3階建て。
 丁度ボランティアさんが主祭殿の下にいらっしゃいました。希望者に解説をしてくれたので、勉強不足だったのでお話を伺う事にします。
 このボランティアさんの知識量が凄かった。
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 そもそも吉野ケ里遺跡の解説ボランティアをするのに面接があるらしいので、一定量の知識やコミュニケーション能力は求められるんだろうなと察することはできたのですが、お話ししたおじ様は自分でもグイグイ知識を求めるタイプの方らしく、吉野ケ里遺跡周辺の当時の地理的状況から海外情勢まで含めて大変密度の濃い話を聞くことができました。
 例えば、当時の佐賀は今よりも内陸の方まで海が広がっており、近隣の川を通じた海路による交流が豊かだったことが想定されること。弥生時代(3~4世紀)頃、近くの朝鮮半島では三国時代の戦乱があり、移民としてやってきた大陸の人々によってもたらされた新しい知識や技術もあっただろうとのこと。当時の吉野ケ里の人々は他の佐賀エリアの同時代の人と骨格に違いがみられる(渡来系)ので、他所と比べても国内外含めた人的交流が多かったのではないかと推測される等々……
 立地的な背景が見えてくると、更に歴史が色鮮やかに見えてくるのですが、このおじ様の話はその辺りが凄く上手で、聞いててとても楽しかったです。私もこんな知的好奇心を持った大人でありたい。
 まぁ、逆を言うと私がグイグイ聞きすぎてしまったためにおじ様の話が止まらなくなってしまい、帰りの電車の時間を1時間程遅らせる結果になりました……いやもうこれは楽しかったから仕方ない。
 他にも色々面白いお話を伺いました。
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 例えば、北内郭の入口近くにある東祭殿。
 こちらは高床式の建物で、太陽の動きを知るために置かれたそうなのですが、時期によって太陽の位置は変わるので、動かしやすいように建物の足元は固定されてなかった(!)のだそう。
 昔の人の知恵と思考をおじ様経由でたっぷり伺い、ニッコニコになりながらようやく主祭殿に入ります。
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 ここは2階が王族なども集まり政について話し合いが行われたと思われる場所。
 3階は司祭者が祖先の声などを聴き、政に必要なお告げなどを王に伝えたと思われる場所。
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 この辺りは人形による再現が行われており、イメージもしやすかったです。
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 北内郭を出て、更に北方面に向かうと、今度見えてくるのは墓地。
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 一般の方が埋葬された甕棺墓列、王が埋葬された北墳丘墓と、お墓が北に向かって伸びています。先程のボランティアのおじ様曰く、北内郭が生者と死者の境目になっていたのでしょうとのこと。
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 こういうお話を聞くと、この都市が当時の知識や死生観に基づいてシステマティックに作られているのだと改めて感動させられます。
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 いや凄いや吉野ケ里遺跡……古の人の叡智がすげぇ……。
 その昔、親から『青森の三内丸山遺跡と、佐賀の吉野ケ里遺跡は行ける内に見ておけ』と言われた意味がよく分かりました。あまりにも朧げ過ぎた大昔の我々の祖先がめちゃくちゃ鮮明にイメージできる。
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 感動しすぎて帰りの園内周遊バスの中では、知ったことや思ったことを園内パンフレットに書きなぐり、とりあえず知識が風化しないようにしておきました。
 時計を見ると、4時過ぎ。
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 慌てて荷物を回収して、乗り換えを挟みつつシャレオツな電車に乗り込みます。
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 向かうはこの日の宿、武雄温泉です。