グラナダ、20時30分。
スペインの夏は21時頃まで明るいのですが、お夕飯の時間になったのでホテルのレストランへ向かいます。
案内された席はテラスの景色が良いところで、お部屋と同じくヘラネリフェが美しく見えます。これから暮れなずんでいくだろう世界遺産を見ながらのお食事、大変優雅でございます。
なお、レストランで食べられるご飯はアラカルト。
ドリンク代は別ですが、それ以外はホテルの宿泊料金に含まれているため、好きなものをオーダーできます。
メニューを渡されたのですが、当たり前な事に英語とスペイン語のみの表記なので、Googleのカメラ翻訳を通したけど微妙に何なのかが分からない。
思考を放棄して、ガストロノミー(美食)コースと書かれたフルコースを注文しました。
ドリンクはアルコールが飲めないので、珍しくあったジンジャーエールをオーダー。
まずは前菜。確かフォアグラのテリーヌ的なやつだったと思います。
阿呆な事にメニューの写真を撮っておくのを忘れたので、雰囲気のみでお察しください。ちなみにこの時、ソースの甘い匂いにつられたのか蜂さんが近くに寄ってきて、回避するのに必死でした。多分一人であわあわしてたから、相当変な人に見えたと思う。
ヘラネリフェは夕日が差して、淡い桃色に輝き出しました。
白身魚はあっさりしたクリームソースがかかってやって来ました。オレンジ色のマッシュしたお豆かお芋はスパイスの風味が効いてて、マッチしてて美味しい。
夜の帳が落ちてきました。飲み物は炭酸水にチェンジ。
クスクスらしきものを座布団にして鎮座まします牛頬肉の煮込みは、ほろほろしてました。どっしりしたソースがパンにもあって幸せ。
ところでお夕飯、全体的にとっても美味しくて、給仕してくれるレストランスタッフの方もお一人様に朗らかに接してくれてとても良い夜だったのですが、如何せんお夕飯の量が……多い。
普段は沢山ご飯を食べる私ですが、ただでさえ日本にいた間に夏バテにかかってしまい、海外ではトイレが少ないためお腹を壊さないように食事を腹八分目以下に留めていた体にとって、久々のフルコースは相当応えました。
お陰様でデザートのいちじくのミルフィーユは、半分も食べる前にギブアップする羽目に。
「もういらないの?」と心配するスタッフに「ごめんなさい……全部美味しかったの……美味しかったんだけど、お腹いっぱいで入らないの……」としょんぼりしながら伝え、逆に「大丈夫よ。気にしないで!」と微笑まれて更にダメージをくらいつつ、ふわふわしながらお部屋に戻りました。とてもくやしい。
あと、ミルフィーユのカスタードクリームがめちゃくちゃ甘くて重い。美味しかったんだけど、甘くて、重い。
しょんぼりはいたしましたが、お部屋へ帰る前に、腹ごなしにホテル内を徘徊していきます。
レコンキスタ(国土回復運動)後はカスティーリャ王国とアラゴン王国の統治下に置かれたアルハンブラ宮殿ですが、その後カルロス5世の時代には避暑地の離宮として使われた歴史があるようで、その際にはそれまでの建物をリノベーションして教会などに利用されていました。
今回泊ったパラドール・デ・グラナダも、ナスル朝時代までは貴族の邸宅として使われていたところが修道院にリノベーションされているため、イスラム建築の様式とキリスト教圏の設備が混ざり合った空間となっています。
宿泊者しか入れない中庭。四方をぐるりと建物に囲まれた中庭は、ナスル朝の間は女性たちの語らいの場として、修道院時代は修道士たちの憩いの場として使われていたのでしょう。
当時の囁きが聞こえてきそうな雰囲気にときめきながら、ぐるりと回廊を一周してみます。
ちなみに2階も同じように回廊があるのでぐるっと回ってきた。
中庭の隣には、祈りの場が。
建物の奥の方はイスラム建築の風合いが濃くて、これはこれで大変興奮してしまいます。
お部屋に帰って窓を開けてみると、ヘラネリフェの方からナイトツアーのショーらしき音が聞こえてきます。どこの国の言葉かは全く分からなかったのですが、窓枠の額縁から見えるヘラネリフェの夜景と音楽はとても素敵でした。
お行儀悪くベッドに転がりながらしばらくのんびりしていたのですが、気付いてしまいました。
……ってことは、夜のアルハンブラ宮殿もめちゃくちゃ素敵なのでは???
お腹いっぱいで気持ち悪いぐらいだし、脚は歩きすぎて発火しそうなぐらい熱くなってるし、体もだるいのですが、アルハンブラで過ごせる夜は一夜だけ。
行きました。
控えめに言って、最高でした。
より強固に、荘厳に見えるカルロス5世宮も。
ライトを灯して陰影がより美しく浮き上がるナスル宮も。
昼よりも高く見え、人を拒む気配すら感じるアルカサバも。
遠くに見えるグラナダの街並も。
過去の歴史と今の営みをダイレクトに感じれた気がしました。
本当に来てよかった。
改めて深呼吸したところで、いい加減疲れたのでホテルへ戻りました。
その道すがら、やっぱり路地裏っぽいとこを覗いてしまったのでおまけに載せておきます。