ノマディック美術館という美術館をご存じでしょうか?
『Ashes and Snow』という動物と人間の共生を幻想的な写真に収めた展示の為だけに作られた移動式美術館です。
建物の素材はどこでも手に入るという利便性から貨物用コンテナと紙パイプが主で、展示が終わると解体されて元の仕事に戻ります。遊牧という意味の「Nomadic」という名前を冠する通り、まさにそれは移動する「旅する美術館」だったのです。
この美術館は、世界中を旅する中、2007年3月には東京 お台場へやってきました。
当時は展示物に興味を持って見に行った私でしたが、中の展示の美しさ・物語性もさることながら、あの美術館の構造が素晴らしすぎて未だに忘れられません。
普段は積荷の外殻となるコンテナの中に包まれて写真や映像を見る何とも言えない安心感と不思議な気持ち。
外観からしてコンテナと紙パイプだと分かっているのに、それがメインとは思えない建物として安定したかたち。
そして、会期が終われば解体されてしまうという儚さ。
なんであの時、美術館のパンフレットを購入できるだけのお金を持っていかなかったのだろうと未だに過去の私をぶん殴りたくなるぐらい好きな美術館、そして展示の一つです。
その美術館を建築面からデザインしたのが、紙教堂の設計者でもある建築家 坂茂(ばん・しげる)さんです。
www.nikkei.com
坂さんといえば、災害時に紙パイプとカーテンで仕切られた避難所用の間仕切りの設置でご存知の方も多いかもしれません。
被災者の方が手に入れづらかったプライバシーを簡単に、そして大きな建材を使う事なく手に入れられるようになる手法は今後もさらに広がってほしいと願うばかりです。
紙教堂(紙の教会)も、元々は1995年の阪神淡路大震災の時に建てられた建築でした。
被災した神戸の鷹取教会に建てられたそれは、救援基地としてボランティアの拠点となった後、2006年には同じく1999年に被災した台湾の921地震の被災復興の交流拠点として移築されたのです。現在では、自然センターの一部として保存がされています。
(参考資料:ウィキペディア)
・ノマディック美術館 - Wikipedia
・カトリックたかとり教会 - Wikipedia
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……とまぁ、長々と説明やら何やら書いたんですが、とにかくここ、一度来たかったんです。
ノマディック美術館で坂茂さんの建築を知り、惚れてからというもの、夢にまで見た場所でした。
写真では見た事あるのですが、天井はどうなってるのか。紙でできてるって他の素材は何なのか……実際に目で見て触れられるものなら触れてみたいではないですか。
そんなわけで、10年越しの恋した相手に会うべく、入園料を払ってさくさく自然センターを歩いていると。
ありました。
本で見たよりももっともっと綺麗。
外は樹脂と思われるブラインドで開閉できて採光や空気の取り入れが大きくできるようになっており、
中は紙管とは思えないしっかりとした柱が半円状に並んで天井を支えています。
天井には少し木材が使われていますが、本当に紙管で天井支えている様子。
ベンチも紙管でできています。
そして、装飾のカーテンも紙製っぽいね……
ベンチに座ってぼんやりしながら、ずっとここに来たかった約十年間の自分の思いを噛み締めてしまいました。
あの時ノマディック美術館で感じた儚さはこの建物からは感じなくて、今もここで生きてるみたいな感じの印象に、謎の幸福感を覚えてました。大事に綺麗にメンテナンスされてるんだろうなと分かる痕跡も見かけて、なんかひたすら嬉しかったです。
自然公園自体は夏は蛙が沢山出るらしく蛙モチーフのものが多かったです。